【学生必見】メーカーの開発職に入社するということ

近未来のオフィス家具です。 やってよかったこと

デザイン系の学生、工学部系の学生が夢見る職業「メーカーの開発職」
実際に就活をして、第一志望である「オフィス家具/文具メーカー」に入社した僕が2年間働いてみて気づいたメーカー開発職のリアルを伝えていきたい。

よかった点、悪い点、文具/家具メーカーのリアルをお伝えしていきたい。

学生が抱くメーカー開発職

「メーカー開発職」。この言葉の響きは、工学部やデザイン系の学生にとって、まさに憧れの結晶だろう。自らのアイデアを形にし、世の中に送り出し、ヒット商品として脚光を浴びる。さらには賞を受賞し、名前が世に刻まれる──。僕も学生の頃、そんな眩しい未来を信じて疑わなかった一人だ。

自分の発想力には自信があった。学内コンペで入賞したこともあり、「自分なら革新的な商品を生み出せる」と心のどこかで思っていた。そして就職活動の末、第一志望だった大手文具・家具メーカーに入社。夢見た開発職としてキャリアを歩み始めた。

しかし、現実は想像以上に泥臭く、複雑で、思い描いた「輝かしい未来図」とは違っていたのだ。

想像より泥臭い開発職

入社当初、僕は「自分のアイデア一つで世の中を変えるんだ」と息巻いていた。しかし現実はそんなに甘くない。トップダウンで降りてくる方針に基づき、「これを作れ」という指示からプロジェクトは始まる。

いいと思ったアイデアも、コスト、製造性、再現性、強度、さらには特許の壁に阻まれて頓挫することが多い。結果的に「自分が作りたいもの」ではなく「作るべきもの」を作る。夢見た“自由なものづくり”とはかけ離れていた。

だが、その現実の中で僕は先輩たちの凄さを知ることになる。限られた条件の中で、市場にない新しい価値を生み出す。何気ないオフィステーブルにさえ、彼らは無数の要素を組み込み、魅力ある製品に仕上げていく。その姿に、僕は自分の浅さを思い知った。

学生の頃思い描いていた開発とのギャップ

メーカー開発職は、「アイデアを考える仕事」と思われがちだが、実際には形に落とし込むまでの地道な工程が山ほどある。僕が体験した開発の流れを簡単に示すと──

  • ダンボールや紙で簡易プロトをつくる
  • 3D CADで設計図を描く
  • 板金や木を使って実際に試作する
  • 実際に使いながら、強度・デザインを評価する
  • 製造ラインでの実装可否を判断する

学生時代はCAD画面上で完結する「アイデア大会」で満足していた。しかし社会人になって気づいたのは、モノは実際に触れて、使ってみて初めて意味を持つということ。画面の上の設計図ではなく、手触りや強度、重さを感じながら考える。その大切さを骨身に沁みて学んだ。

メーカー開発職は、頭で描いた夢を現実に翻訳する翻訳家のような存在なのだ。

学生時代とのギャップ

正直に言うと、最初の1年はこのギャップに苦しんだ。アイデアを形にして世に出す華やかな姿を想像していた自分にとって、泥臭い試行錯誤の連続はつらかった。

毎日ミリ単位で設計を詰め、図面とにらめっこ。何度も修正してはやり直す。想像していた「クリエイティブな仕事」とは程遠い現実。もし「自分のアイデアを自由に形にしたい」と夢見ている学生がいたら、ぜひ知っておいてほしい。メーカー開発職はそんな甘美なものではない。

2年目で看板商品の担当になった。(先輩と2人1チーム)

そんな僕にも転機が訪れた。入社2年目、会社の看板商品を担当する開発チームに抜擢されたのだ。もちろん、10年選手の先輩と二人一組。責任は重いし、プレッシャーも大きい。残業は増え、試作と検証の繰り返しで体力的にも精神的にも消耗する。

それでも、自分の提案したアイデアが議論を経て採用され、実際に形になっていく瞬間の喜びは何にも代えがたい。社会人になって初めて「自分が開発職でいる意味」を感じた瞬間だった。

僕はいま、しんどさと楽しさの天秤を天真爛漫に振り子のように揺らしながら日々を過ごしている。今年の挑戦で「達成感」が「しんどさ」を上回るなら、僕はこの道を歩み続けるだろう。逆に、もし苦しさが勝つなら異動や転職、あるいは独立という選択肢も考えている。

オフィス家具業界の残念なところ

これはオフィス家具業界にとどまらないかもしれないが、がっかりすることがある。
それは「競合他社がこれをしているからうちもそのポジションを奪われないために同じような機能を持たせよう」と言うことだ。

ダサすぎるだろ。いいと思ったもの、自分が信じるもので勝負しろ。
まあ大企業だからわからなくもないが。

例えば上の写真はイトーキのモバイル充電器。イトーキが出しているから、弊社も同じようなものを出そうといい、コクヨ、オカムラも似たような製品を出している。

コクヨ:エナジーボトル(公式より引用)

オカムラ(OC portable battery)

スノーピークのような、自らが本当に欲しいと思ったものを売るスタイルをオフィス家具においても踏襲したいものだ。

まとめ

「メーカー開発職」とは、華やかで自由な仕事だと思われがちだ。しかし実際は、地道な試行錯誤と制約の連続だ。学生の頃に夢見た「自分のアイデアをそのまま製品化する未来」は、現実にはほとんど訪れない。

だが同時に、この仕事には確かなやりがいもある。自分の言葉や発想が仲間の手で磨かれ、試作を経て形になり、最終的に世に出て人の役に立つ。その瞬間の達成感は、何ものにも代えがたい。

メーカー開発職は、「夢」と「現実」の間で揺れ動く仕事だ。時に苦しく、時に誇らしい。もしあなたがこの道を志すなら、理想だけでなく現実の泥臭さも受け入れてほしい。そうすればきっと、そこにしかない成長と喜びに出会えるはずだ。

僕自身、まだ迷いながらこの道を歩んでいる。しかし「自分が関わった商品が、誰かの仕事や暮らしを少しでも快適にする」──その事実だけは揺るがない誇りだ。

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