結論から言う。愛しているから、買わなかった。
Snow Peak歴3年。気づけばサイトに並ぶギアの8割が雪峰のロゴになっていた。テント、テーブル、チェア、クッカー——財布の底が何度見えたか分からない。
自分でも引く。完全に沼だ。
だからこそ、言わせてほしい。「それは買えなかった」ではなく、「それは買わなかった」。その5製品の話をする。批判ではない。3年間ずっとスノーピークを使い続けてきた人間の、愛ある本音だ。
1. 雪峰祭2025の限定ギア群——フリスビーに5,000円払う気になれない

かつての雪峰祭は、本当にすごかった。
限定Pro.airラインの幕体、ジカロテーブル2ユニットブリッジ——「これを買うためにキャンプをしている」と言っても過言ではないようなギアが、春と秋に出てきた。サイトの景色を一変させるような、エンジニアの狂気が詰まった製品たちだ。
2025年春の雪峰祭を見たとき、僕は正直、寂しくなった。

フィールドディスク、5,000円。
フリスビーだ。どう考えても。
蚊取り豚、毎年カラー違いで登場。
可愛いのは分かる。でも「限定感の演出」として毎年やられると、さすがに気づく。
コーンホールテーブル、11,000円。
アメリカのテールゲートパーティのゲームを、なぜ今の日本のキャンプシーンに高額で投入するのか。誰が欲しかったのか、正直わからない。
僕たちはSnow Peakのロゴにお金を払っているんじゃない。その背後にある「哲学」と「フィールドでの体験」に惚れているんだ。
じゃあ何が欲しいのか? 勝手に3提案する。
①IGTスタンディングレッグ(1100mm)

既存の最長脚は830mm。そこから270mm伸ばしてスタンディングバーの高さにする。満天の星空の下、IGTで組んだバーカウンターに肘をついてウイスキーを煽る。その光景、想像しただけで財布が開く。剛性と転倒リスクという課題はある。でもそこを技術でねじ伏せてこそSnow Peakじゃないのか。
②アメニティドームSS / LL

キャンプ場を見渡せば右も左もアメドM。名作の宿命だ。ソロ・デュオに特化したSS、宴会幕として異様な存在感を放つLL。「あえて今、アメドで来たか」という視線を、サイズ感で裏切る。この玄人の遊びができるギアが今の雪峰祭に足りない。
③ランドネストPro.

ランドネストのフレームワークと居住性は、実はベテランほど評価している。でも「初心者用」のレッテルを嫌って手を出さない。幕体をリップストップに変えて、サイドウォールを追加して、メッシュを増強する。形はランドネスト、中身は別物。羊の皮を被った狼——これが所有欲を最大まで刺激する。
フリスビーに5,000円払うくらいなら、これらに倍の値段を出したい。
2. フローガL——「炎が見えない焚き火」に意味はあるか?

※画像は公式HPより:https://www.snowpeak.co.jp/
Snow Peakの焚火台。逆四角錐のあのシルエット。タフなステンレスの輝き。日本のオートキャンプ文化を創った、聖域のような存在だ。
その聖域に土足で踏み込むオプションが「フローガL」だ。
二次燃焼構造で煙を抑制する。燃焼効率が上がって、後に残るのは白い灰だけ。開発意図は痛いほど分かる。実際、機能として優れているのも百も承知だ。
でも、3年間ずっと買わなかった。理由は3つ。
炎が見えない。
僕はなぜ重い薪を運んで火を熾すのか。揺らめく炎の根本を眺めて、その生命力を感じるためだ。フローガの巨大な筒は、炎の一番美しい部分をそっくり隠す。
焚火台のデザインが死ぬ。
あの完成された造形美の上に、無骨すぎる筒が乗る。これを「ダサい」と言わずに何と言う。
熱が届かない。
焚火台から全方位に広がるはずの輻射熱が、金属板に遮断される。冬キャンプで暖を取りたいのに、目の前にあるのは「熱くない焚き火」。本末転倒だ。
機能が正しくても、体験が死んでいたら意味がない。それがフローガに対する僕の結論。

3. セイエン——「体験」を「モノ」で売るな、という話

※画像は公式HPより:https://www.snowpeak.co.jp/
釣り上げた鮎や岩魚を串打ちして、焚き火の周りに立ててじっくり焼く「原子焼き」。皮はパリッと、身はふっくら。
セイエンが可能にする体験は、本物だと思う。製品としての完成度も高い。
それでも買わなかった。
冷静に考えてみてほしい。年に何回、新鮮な魚を串打ちして焼く機会がある?
多くのキャンパーにとって、それは「やってみたい」イベントであって、日常じゃない。年に一度あるかないかの「ハレの日」のために、嵩張る専用ギアを自宅と車に常備するのは、あまりにスペースの無駄遣いだ。
一回体験すれば「美味かった!」で完結する。二度目以降は準備と片付けの手間が勝る。それが目に見えている。
だからこそSnow Peakに強く提案したい。直営キャンプ場でのレンタルを解禁してくれ。
1回3,000円払ってでも使う。「モノ」を売るんじゃなく、「コト(体験)」を売る。それこそが本来Snow Peakが目指していた野遊びの提供じゃないのか。
4. ワンアクションラック——7.5万円の「棚」の話をしよう

※画像は公式HPより:https://www.snowpeak.co.jp/
美しい。竹の集成材と黒いフレームのコントラスト。もはや家具ではなく、芸術の域だ。
値札を見た瞬間、目を疑った。
……7.5万円?
これは「棚」だ。物を置くだけの台だ。ユニフレームなら数千円で同じ機能を持つ棚が買える。
だが、ここで気づいた。これはSnow Peakからの挑戦状だ。「お前の愛は本物か」「たかが棚に7.5万払える覚悟があるか」——試されている。
キャンプサイトにこれが鎮座している光景。それは必要なギアを全て買い揃えた者が到達する、ある種の「あがり」の境地だ。
だから僕は今も買っていない。買えたとき、たぶん一つの境地に達する。
5. トバチ/タクバコ——伝説の「迷作」、正直に言う

※画像は公式HPより:https://www.snowpeak.co.jp/
「らしくない」を通り越して、「どうした?」と聞きたくなった。
キャンプギアの正義は「軽量・コンパクト」だ。なのに重い・嵩張る・割れるの三重苦を高価格で出した。
ピクニック用? ピクニックこそ身軽に行きたいだろう。重い磁器を背負って公園に行くのは、もはやトレーニングだ。
結果は明白だった。今や廃盤。各店舗のワゴンセールで投げ売りされているのを何度も見た。その姿を見るたびに胸が痛む。金型代……企業の損失であり、ユーザーにとっても「迷走」の記憶として刻まれた遺産。
安くなっていても、僕は買わない。
ちなみに、スノーピーカーの友人にプレゼントしたら喜んでいた。使い道は人それぞれだ。

【番外編】フィールドバリスタドリッパー——朝一の知恵の輪

※画像は公式HPより:https://www.snowpeak.co.jp/
見た目は最高にカッコいい。バラバラになるパーツも、男心をくすぐるギミックに見える。買う前は。
断言する。「組み立てが地獄ほど面倒くさい」。
朝のキャンプ場。肌寒い空気の中、早く温かいコーヒーを飲んで目を覚ましたい。なぜその瞬間に、6つのパーツを組み合わせる知恵の輪を解かなければならないのか。
二日酔いの頭で、手がかじかむ中、バラバラのプレートを組み立てる。「俺はコーヒーが飲みたいだけだ。工作がしたいわけじゃない」——3回キャンプで持参して、3回そう思った。今は棚の奥に眠っている。
道具における「手間」は愛着に変わることがある。でも「無駄な工程」は単なるストレスだ。組み立てが面倒な道具の末路はひとつ、使わなくなる。
黙って「焚火台型」を選べ

ドリッパーを新たに買うなら、フォールディングコーヒードリッパー「焚火台型」一択。パッと開くだけで一瞬で使える。堅牢でシンプルで美しい。これがSnow Peakの本来持つ「フィールドでの最適解」だ。
バリスタドリッパーのギミックに酔いしれるのは、家の中だけにしておけ。
Snow Peak沼3年目の、本当の結論
辛辣な言葉が並んだかもしれない。不快に思ったスノーピーカーがいたら申し訳ない。
でも、これだけは分かってほしい。どうでもいいブランドなら、そもそも記事にしない。「もっと良いものが作れるはずだ」「もっと僕たちをワクワクさせてくれ」——その期待があるからこそ、あえて書いた。
僕たちが求めているのは、洒落た雑貨でも高すぎる棚でもない。フィールドの常識を覆すような、無骨で革新的で、魂が震えるようなギアだ。
それでも次の週末も、僕はSnow Peakのテントを張る。
文句を言いながら使い続ける。それが、スノーピーカーという面倒な生き物なのだから。













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